「エンジン不調(2)」を見て頂いた人はお分かりだと思うが, 私が使っていた携行缶の内部に錆が発生してしまった。
給油のときに燃料タンク内にうっすらと錆のような物が見えたのが,発見のきっかけになった。給油してから錆に気付いたので,当然ながらキャブレター内に混入しただろう・・・。
という事で,今年初めてのキャブオーバーホールだ。
キャブ単体になっている,この状態から作業スタート。
当サイトを初めて閲覧する人は,まずは「キャブレターの取り外し」を見ていただき,「キャブレターの分解・点検・清掃」に進んでから,このコンテンツを見るといいだろう。
前回より少しステップアップしたメンテをやってみようと思う。
いつものように自己流ですので,マネする時は自己責任でお願いします。
今回の作業のようにキャブ内に異物が混入した可能性がある場合は,状況を把握するための段取りが大切だ。
まずは「キャブレターのガソリンを抜く」のように,綺麗な容器にガソリンを取り,ガソリン内の汚れをチェックする。
そしてフロート室を外すと,底の部分にうっすらと細かい錆のようなものが入っていた。
この船外機には燃料タンクの下部に燃料フィルターが装着されているが,細かいものは通過できてしまう。そして混入した錆を放置すると,各部にこびりついてしまって被害が拡大する。
これは後でキャブクリーナーを使って清掃しよう。
燃料タンクのすぐ下にある燃料フィルターには,錆の跡が残っていた。
フィルターがこの状態なら,恐らく燃料タンク内に汚れが残っているだろう。
後でタンクも掃除しよう。
今回はパイロットスクリューも外してみようと思う。
このスクリューはアイドリング時の燃料を供給するための通路を調整する,重要なネジだ。
このスクリューは完全に締まっているのではなく,完全に締まった状態から特定の量だけ緩んでいる。
具体的な調整要領もあるのだが,とりあえず現在の調整状態を確認しておくのが重要だと思う。
エンジンの調子に関係なく,スクリューを外す前に現在の状況をチェックしておく。矢印の方向にスクリューを回して,何回転で完全に締まったかを確認しておく。
マイナスドライバーで回すスクリューなので,回した回転数を数えやすい。
これで完全に締まった状態から何回転緩めてあったのかが把握できる。多くのキャブは,2~3回転で全閉すると思う。
ちなみに私のキャブは今回初めて回してみたのだが,2回転半とちょっとで全閉になった。
注意:このスクリューは先端が非常に細くなっていて,強く締めるとスクリューが痛んでしまうため,軽く閉めるようにする。
最初の状態が分かったらスクリューを外す。
この状態で,スクリューが付いていた場所にスプリングが残っているので気をつけよう。
残っていた スプリングを外す。
これがパイロットスクリューとスプリングだ。 特にスクリューの先端が非常に細いというところに注目。
この極細の部分でアイドリング時に送られる燃料の量を決めている。したがって,ここが痛むとアイドル不調の原因になりやすい。
スクリューにはOリングが装着されている。スクリューを外したときは新品に交換しよう。
ちなみにパイロットスクリューの先端部分は,キャブ上部のフタを空けると少しだけ見える場所がある。
いつものように,フロート,ニードルバルブ,メーン&パイロットジェット,メーンノズル,キャブ上部のアルミ製カバーなどを外した。
外した細かい部品を適当なケースに入れて・・・。
泡状のキャブクリーナに漬ける。
フロートやパイロットスクリューも一緒に入れるなら,曲げたりしないように注意すること。
そしてパーツクリーナーで洗浄。細かい精密部品は慎重に扱う。
写真のように金属製のザルなどを使うと,精密部品に傷を付けやすいので注意だ。
燃料コック部のOリング交換
最近燃料コックの動きが渋いように感じるため,コック部を分解してOリングを交換しようと思う。
燃料コックは引っ張るだけで取れるのだが,ストッパーの役割をしているビスが1本あるので,これを外さないとコックは取れない。
プラスドライバーでビスを外す。
あとはコックをグリグリと動かしながら引っ張るだけだ。
写真ではプライヤーで直接コックを挟んでいるが,コックに傷がつくのでウエスなどを挟むといい。
コックには向きがあるので,覚えておく。
まあ,続きを読めば組めると思うが。
コックが外れた。
燃料の通り穴付近に汚れが目立つ。動きが悪い原因は,この汚れだと思う。
ストッパーの役割をしていたビスが入る,溝の部分を確認しておく。
組み付けは,ビスが溝に入るように組めば問題ない。
Oリングを外して燃料の通り穴付近を細かいペーパーで磨いた。
Oリングは壊れていなかったが,新品に交換する。ヤマハ:グリースAを塗って組むらしい。
ちなみに,ストッパービスにもグリースAを塗るらしい。
フロート系統の点検
続いてフロート周辺を見てみよう。
メインジェットとパイロットジェットは「キャブレターの分解・点検・清掃」に書いたように,綺麗に清掃して穴の状態を確認する。
今回はパイロットジェット部のゴムキャップが劣化して緩くなっていたので,新品に交換した。
フロートは金具部分が変形するとキャブレター内に入る燃料の量(油面)が変わってしまい,エンジン不調を起こす。
したがって,取り扱いに細心の注意を払う。
今回は,油面について考えてみようと思う。
(Flashアニメーション)
フロートの動きは,こんな感じだ。
緑色の先が尖った部品は「ニードルバルブ」。
燃料が規定量に達したら,フロートの浮力を利用してニードルバルブで栓をする。
キャブ内に入る燃料は多すぎても少なすぎてもエンジン不調になるため,この「栓をするタイミング」が非常に重要だ。
フロートを下向きにキャブを持つと,フロートは自重で下に下がる。
指で持ち上げると,こんな感じになる。
燃料が規定量入っていると,キャブ内ではこの状態になっているはずだ。
キャブを反対にすると,こんな感じだ。
写真矢印部の寸法を「フロート高さ」といい,ここの寸法がキャブごとに決められている。
このキャブにもシビアな基準の寸法というものがあるのだが,最低条件として「見た目」を覚えておくと便利だ。
このキャブは,写真のようにキャブを反対にしたときに,「フロートとキャブ本体の面(写真の赤い二本線)が平行になる」と私は覚えている。
過去に油面調整した事がないフロートで衝撃や無理な力を加えた記憶が無く,目視でほぼ平行になっていれば,フロートの調整不良による絶不調は,あまり起こらないのではないかと思う。
ちなみに,当サイトを閲覧してくれているヤズ太郎さんの船外機がエンジン不調になったとき,写真に写っていたフロートが平行になっていなかったため,油面の調整不良である事が判明した。
ヤズ太郎さんのフロートの角度のようになっていると,フロートがあまり上がらなくても栓をするようになるため,油面が低くなるのではないかと思う。
油面の調整が必要な場合は,フロートの金具を曲げて調整する。ニードルバルブを押している部分だ。
フロートは振り子のように動き,ニードルバルブは振り子の支点近くにあるので,金具を少し曲げただけでもフロート高さは大きく変わる。
ほんの少しずつ曲げよう。
※曲げる前に,フロートの高さ寸法を覚えておく。エンジンの調子が良くならない場合に,元の状態に戻せるようにするため。
※油面調整はキャブごとにシビアな寸法規定値があり,正確に高さを確認するための専用工具もある。勘で調整するのは非常に危険だ。