プロペラが付いていた側から見ると,こんな感じになった。
オイル漏れや,ギヤ部への海水浸入を防ぐ「オイルシール」は,ハウジングとほぼ同じ高さに組まれている。
オイルシールは2重構造になっていて,写真のオイルシールの奥に,もう1つ同じ部品が組まれている。
外側のオイルシールは過酷な環境で使用されるため,2重構造は信頼性が高い。
2重構造で外側にオイルが漏れるって事は,2つともオイルシールがダメになったって事だろうか・・・。
少し疑問が残る。
プロペラ側からマイナスドライバーを使用して,テコの原理で外す。
このオイルシールは破壊しても問題無いのだが,ドライバーでハウジング内部に傷をつけないようにしよう。
上の方法だと少し固いので,私は反対側から押し出す作戦で外した。
コンクリートなどの固いところにウエスを敷いて,オイルシールを下向きにしてハウジングを置く。
マイナスドライバーを斜めに当てハンマーで軽く叩いて,オイルシールを押し出す。
ドライバーでハウジング内部に傷をつけないようにしよう。
このように,外側のオイルシールを狙う。
ブッシュの角にドライバーを軽く当てておくと安定する。
これがブッシュだ。恐らく真鍮製?だと思う。
内部には斜めの溝が切られている。シャフトの潤滑を維持するため,オイルがシャフト全体に行き渡るようにしているのではないかと思う。
オイルシールを外す時にドライバーを当てる時は,ブッシュが柔らかい部品であるため変形させないように注意する。
私は角(矢印部付近)を少し変形させてしまったため,ペーパーで修正した。
ハンマーでドライバーを叩くと,少しずつ出てくる。
小さいオイルシールなので,あまり強く叩かなくても出てくる。
ただ,叩くときにオイルシールが壊れてくるので,叩く場所を変えながら取るといい。
外側のオイルシールが取れた。
向きがあるので覚えておこう。スプリングが見える方が,外側になる。
続いて奥にあるオイルシールを取る。
取る前に,オイルシールの取り付け深さを確認しておこう。
大まかな位置を把握しておくと,スムーズに作業ができる。
この船外機の内側オイルシール取り付け寸法は,約 7mmだった。
新品のオイルシールの高さを測ってみたら6.5mm位だったので,恐らく外側と内側のオイルシールは,ほぼ密着していたのではないかと思う。
内側のオイルシールを外した。
外側のオイルシールと同じ要領で,思ったよりも簡単に取ることができた。
ここまでの作業はギヤオイルを抜いてプロペラを外すのを含めても,慣れれば10分程度で作業ができる。
続いて,新品を組み付けする前に,外したオイルシールを使って組み付け練習だ。
オイルシールを組み付けするときは,オイルシールの外側を押していく工具が必要になる。
もちろん専用工具もメーカーから出ているようなのだが,身のまわりの物で代用できるのなら,それでも構わない。
第1候補として,工具の差込口を変換するアダプタを利用してみた。
ハウジングにオイルシールを組み付けする場合,オイルシールは内側よりも外側の方が高くなっているので・・・。
このように,工具を使用してオイルシールの外側を押しながらハウジングに入れていく。
ハウジングの内径よりも少しだけ小さい工具で押し込んでいく。
工具が大きすぎるとハウジングに噛み込んでしまって,工具が取れなくなる場合がある。
また,こんな感じでオイルシールの内側を押してしまうとオイルシールが壊れてしまう。
とりあえず変換アダプターをこのように当て,オイルシールを入れてみた。
なかなか順調だ。
上写真の向きでも良かったのだが,反対ににしてみると・・・
かなり安定する。
専用工具とまではいかないが,なかなか入れやすかった。
だが,ほんの少しだけ工具のサイズが大きく,ハウジングから取れにくくなる・・・。
スパーク・プラグ用のソケットレンチでもやってみたが,こっちの方がサイズは絶妙であった。
私の船外機で,オイルシール取り付け用工具として昇格した。第2の人生を歩んでもらおう。
ちなみにこのソケットは,16mmサイズのプラグ用で,私の船外機に付いているプラグは外せないサイズのソケットだ。
きちんと組める事を確認。これで専用工具を注文しなくても大丈夫そうだ。
ちなみに,このプラグソケットの外径は,約21.3mmであった。
このサイズは絶妙だ。
変換アダプタのサイズは,約21.8mm。これだと少しだけデカすぎる。
ハウジングに噛み込むギリギリのサイズで,作業できない訳ではないが。
当たり前のことだが同じ用途の工具でも肉厚が違うので,物によっては必ずしも使えるとは限らない。
これはハウジングのOリングが付いている部分。このOリングは再使用不可部品のため,一緒に交換する。
このOリングや,Oリングが接触する周辺が壊れていた場合も,ギヤオイル白濁の原因になるだろう。
ここにはグリースを塗って組み付けするので,古いグリスで汚れている。綺麗に清掃しよう。
Oリングを外す。
パーツクリーナーでハウジング全体を綺麗に清掃する。
Oリングが付いていた溝の中なども,入念に清掃する。
ハウジングには「ブッシュ」という金色の部品が圧入されている。
ブッシュとプロペラシャフトの間はギヤオイルで潤滑されるようだ。
ブッシュ内周に異常な傷や摩耗などがないか確認する。異常があれば,ブッシュ交換が必用だ。
今回は異常が見られなかったので,そのまま継続して使用する。
プロペラシャフトも点検だ。まずはパーツクリーナーで清掃する。そしてオイルシールが接触するあたりに異常な傷が無いか確認する。
プロペラに釣り糸やロープなどを絡めてしまった事がある場合は,入念にチェックする。オイル漏れの原因が,必ずしもオイルシールとは限らない。
シャフトに傷や曲がりがある場合はオイルシールを新品にしても,また漏れてしまう。
部品注文
ここまで分解・点検してから,部品を注文した。 分解してみることで新たな部品が必要になる事もあるためだ。
特にボルトの錆などは,外してみてからでないと分からない。
2度手間にならないように,ある程度分解してから注文した方がいいと思う。 すぐに組み付けできないのがデメリットだが。
今回使用した部品・油脂の紹介だ。
- ハウジングのOリングだ。252円。
- シャフトのオイルシールで,同じ物が2個必要だ。1個231円だった。
- ギヤオイル交換時に脱着するボルトのガスケット。2個必要。1個84円。
- オイルシールとOリングに塗る「ヤマハ:グリースA」と,プロペラシャフトに塗る「ヤマハ:グリースD」
- ギヤオイル。
オイルシールの組み付けは、慣れていない人がやると結構高確率で失敗してしまうため、初めて自分でやってみる人は失敗したときのため、予備を2~3個買っておくといいだろう。
予備を2個買っておいて1発で成功した場合は、次回交換するときの部品として確保できる。
この他,船外機に塗る塗料とパーツクリーナー,ウエスなどが必要。
思ったより分解は簡単で,費用も安い。これなら毎年やってもいい。キャブより楽勝だ。
部品が入荷するまでの間,ギヤが丸見えではホコリが入ってしまうので,このように仮組みしておくといいだろう。
またはビニールなどをガムテープなどでぐるぐる巻きにしておいてもいい。
強風で砂なんか入ったら,整備というより船外機を壊してしまう。