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ベイトリールのドラグ周辺

ドラグを含めた動力伝達経路

ハンドルを回したときの動力伝達は「スプールが回転するまでの仕組み」に書いたが,この流れはドラグを無視した状態だった。

ここでは少しステップアップして,ドラグを含めた動力伝達と,ラインが強く引っ張られたときのドラグの作動について考えてみようと思う。

ドラグに関係する部品は,メインギヤ周辺に集中している。

ベイトリールのハンドル周辺の部品

ここらへんを分解して,構造を考えてみようと思う。

ちなみに左の写真は,今回の話と関係の無い部品を数点取り外してある状態だ。

ベイトリールのハンドルとメインギヤ軸

ハンドルノブを回転させると動力はメインギヤ軸へと伝わるが,これらの部品は連結されているので,直接動力を伝えていく。

従ってハンドルが1回転すると,「メインギヤ軸」も必ず1回転する。

ベイトリールのメインギヤ軸

「メインギヤ軸」には,「メインギヤ」が取り付けされる。

ベイトリールのメインギヤ

これが「メインギヤ」だ。

中心の穴が丸いのに注目!

メインギヤ軸とメインギヤ

軸が丸い形状の「メインギヤ軸」に対して, 丸い中心穴の「メインギヤ」が入っている。

従って,このままでは動力を伝達することができない。

ベイトリールのストッパーギヤ

動力を伝えていく役割をする部品に,「ストッパーギヤ」という部品がある。

中心の穴が四角になっているのに注目!

メインギヤ軸とストッパーギヤ

「メインギヤ軸」に,一番最初に入るのが「ストッパーギヤ」だ。

「メインギヤ軸」は一番下だけが四角い形状になっており,そこに「ストッパーギヤ」がはまっている。

この2つの部品は噛み合っているため,「メインギヤ軸」が1回転すると,「ストッパーギヤ」も必ず1回転する。

バンタムスコーピオンメタニウムXTのメインギヤ軸とストッパーギヤ

ちなみに左の写真はシマノ製「バンタムスコーピオン メタニウムXT」通称「赤メタ」と呼ばれるリールで,このリールの場合だと,最初から「メインギヤ軸」と「ストッパーギヤ」は一体の部品になっている。

一体にするかしないかは,部品製造時の都合などによるのではないかと思う。

ベイトリールのスタードラグ座金(ドラグワッシャー)

そして「スタードラグ座金」という部品。中心の穴が丸いのに注目!

「ドラグワッシャー」などとも呼ばれるこの部品が・・・。

ストッパーギヤの上にドラグワッシャーを乗せる

ストッパーギヤの上に乗って・・・。

メインギヤとドラグワッシャーを組み付けた状態

「メインギヤ」が乗り,「スタードラグ座金」が乗って・・・。

スタードラグ板を組みつけ

「スタードラグ板」という金属のプレートが乗っている。

ドラグ周辺の部品一覧

ここまで,「メインギヤ軸」に入れた部品の全て。

中心の穴が四角なのは「ストッパーギヤ」だけ。

そして「スタードラグ板」は,中心の穴が特殊な形をしている。

メインギヤ軸とスタードラグ板の噛み合い部

「メインギヤ軸」と「スタードラグ板」は平らな部分があり,噛み合うように取り付けされる。

したがって,「メインギヤ軸」が1回転すると,「スタードラグ板」も必ず1回転する。

ベイトリールのローラークラッチインナーチューブ

そしてチューブが乗っかって・・・。

インナーチューブの上に3枚の座金がある

座金が乗って・・・。

スタードラグ固定ナット

ナットが付いている。

ナットを締めた時のドラグ周辺の圧縮

最初の状態だとハンドルを回してもメインギヤへ動力は伝わらないが,このナットを締めれば締めるほど,これまで入った部品は圧縮されて密着していく。

なので,動力がメインギヤへと伝達されていくわけだ。

上写真のナット部分には,ドラグのハンドルが付けられる。ナットとハンドルはかみ合っているので,ハンドルを1回転させるとナットも1回転する。

したがって,ドラグのハンドルで調整しているのは,メインギヤの上下にある部品の「圧着力」という事になる。

締めれば締めるほど圧着され,メインギヤの滑りは少なくなる。

ドラグ周辺の部品一覧

この写真でハンドルと連動して動くのは「ストッパーギヤ」と「スタードラグ板」だけであるため,摩擦力によって動力を伝達していくのは「スタードラグ座金(ドラグワッシャー)」の両面という事になる。

ここの摩擦力はドラグ性能の一番重要な部分となるため,ワッシャーの劣化具合や汚れ・給油状態などが適切に管理されていないとドラグの性能は発揮できない。

また,「スタードラグ座金」の両面には,「ドラググリス」という専用のグリスが給油されている(無給油のリールもあるようです)。

ちなみにリールを保管するとき(使用しないとき)は,ドラグを緩めたほうがいいようだ。

これは,圧着したまま長期放置することでドラグワッシャーなどがメインギヤなどにくっついて,取れなくなってしまうトラブルを防いだり,ワッシャーがつぶれてしまうのを防ぐため。

ドラグのハンドルを強く締めても滑りやすい場合は,ドラグワッシャーの劣化や汚れ,グリスの給油不適切などが原因の可能性が高い。

スピニングリールでも同じ。

ハンドル周辺の動力伝達

今までの流れを総合して考えると,結局動力の伝達順序は,

  1. ハンドルノブ
  2. ハンドル
  3. メインギヤ軸
  4. メインギヤの上下にあるドラグワッシャ(同時)
  5. メインギヤ

この順番に伝わっていく事になる。

ピニオンギヤ周辺の動力伝達

そしてメインギヤの動力はピニオンギヤへと伝えられ,クラッチが繋がっていれば,スプールへと伝達され,スプールが回転する。

ベイトリールでラインが引かれた時の動力伝達経路

ドラグ作動の仕組み

大物を掛けた時や根掛かりした時,ラインを強く巻いたり引っ張ったりすると,ドラグが作動する(滑る)事がある。

今までの動力伝達を理解できれば理屈は簡単だ。

ラインが矢印の方向に強く引かれると,「スプール」 → 「ピニオンギヤ」 → 「メインギヤ」の順に,矢印の方向に力が掛かる。

ハンドルは「ワンウェイ・クラッチ」の働きによって巻き取りの反対方向には回転できないため,ドラグワッシャーを挟んでいる「ストッパーギヤ」と「スタードラグ板」も回転できない。でも,「メインギヤ」は回転しようとしている。

ドラグの圧着力(摩擦力)を上回る力がメインギヤに掛かると,「メインギヤ」「ドラグワッシャー」「ストッパーギヤ」「スタードラグ板」の間で滑りが発生し,ラインが出るようになる。

これが,ドラグの作動だ。