製作開始日:2015年1月3日
今回はヤマハ純正「グリースA」を使用したグリスアップに挑戦。
私の船外機には「グリースガン」という道具を使って給油する場所が2箇所ある。今回はグリースガンでの給油と,比較的メジャーな場所へ手で給油するグリスアップをやってみようと思う。
写真は今回使う道具,ヤマハ グリースA とグリースガンだ。写真のグリースガンはホームセンターなどで売っている激安品で,確か千円ちょっとの品。先端がホース状になっていて狭い場所で給油しやすいタイプなんかも売っているが,私の船外機ではコレで十分。っていうか,私はコレが使いやすい。
この他にパーツクリーナーとウエスを準備する。
まずは船外機を整備用スタンドに設置し,このような向きにする。
この向きにすると,シフトレバーの近くに2箇所の給油する場所が見えてくる。
シフトレバー近辺を見てみよう。
こんな感じ。
シフトレバーの給油部をさらに拡大してみると・・・。
こんな感じ。
この部品は「グリースニップル」などと呼ばれるグリース注入口。グリースニップルは中をくり抜いたボルトのような形状をしていて,先端にボールが入っていてスプリングで押し付けられてフタをされているため,グリースを入れる時は通路が開き,入ったグリースはボールのフタによって逆流できない構造になっている。
ちなみにニップルは単体で取り外す事ができる。壊れない限り外す事は無いと思うが。
「グリースニップル」でgoogle画像検索してみると分かりやすい。
ここへグリースガンを使って「ヤマハ グリースA」を注入していく。
ちなみにここは,シフトレバーを操作したときに摩擦する場所を潤滑するためのグリースを注入する場所。
もう1箇所。
こちらは船外機を左右に回す時に摩擦する部分を潤滑するためのグリースを注入する場所。
まずはグリースガンの各部名称から。ちなみに名称は多少アバウト。
グリースガンはレバーを操作する事で,シリンダー内に入れたグリースをノズルから出てくるようにしたポンプのようなものだ。
ノズルをニップルに押し当ててレバーを操作する事で,ニップル内部を通って各部へ給油できるようになっている。
これはグリースガンのシリンダー内を図で表したもの。
シリンダー内にはピストンとスプリングが入っていて,ピストンを図の右側へ引っ張るためにチェーンが取り付けられている。
チェーンを図の右側へ引っ張るとスプリングを縮めながらピストンも右側へ引かれ,シリンダー内(ピストンの左側)に空間ができるようになっている。
この空間にグリースを充填して使用するのだ。
グリースの充填は別売りのカセット式グリースをセットする方法と,シリンダー内に直接グリースを注入する方法などがある。ホームセンターなどで売っている一般的なグリースガンの多くは,どちらの方法でも使用できるようになっていると思う。
これだけの構造だとグリースを注入してチェーンから手を離した瞬間に「バズーカ砲発射!」になってしまうため,チェーンを引っ張ったままロックできるようになっている。
チェーンが通っている穴に注目。
まずはチェーンを引っ張ってスプリングを縮めながらピストンをバックさせて・・・。
チェーンを細い穴の方へずらす事で,チェーンにロックが掛かってバズーカ砲の発射を防ぐ事ができる。
この状態でカセット式グリースをセットしたり,内部にグリースを直接充填したりする。
そしてレバーを操作して使用するときは,チェーンのロックを解除してスプリングの力でグリースをノズル側へ押し込んだ状態で使用する。
グリースをセットするために多くのグリースガンは矢印部がネジになっていて,シリンダーを回す事で分離できる構造になっている。
レバーの方を持ってシリンダーを回すと・・・。
こんな感じで分離できる。
ちなみに分離する時はシリンダー内にグリースが残っていると,チェーンを引いてロックを掛けておかないと「ビックリ箱,ビヨーン!」なので注意しよう。
どうなるのかやってみたい気もするが(笑)。
チェーンを引いてロックを掛けた状態で「ヤマハ グリースA」を充填する。
たっぷり入れてしまうと夏場にグリスが分離して漏れ出してきたりするので,少量の方がいいと思う。
新品のグリースの色を覚えておこう。
充填したらあとはバズーカを発射するだけ・・・ではなくて,シリンダーを取り付けてチェーンのロックを解除。これでスタンバイOKだ。
まずは下の方,左右に回転させる部分の給油からやってみよう。
ニップルに強くノズルを押し付けて(船外機が不安定な状態だと倒れる恐れがあるので注意),レバーを操作すると,別の場所(矢印部)からグリースが出てくる。
充填しながら船外機を回して各部へ行き渡らせ,また充填。
古くなって劣化したグリースは,灰色っぽくなっている事が多い。
このグリスアップは給油だけでなく古いグリースを押し出すのも目的になっているので,出てくる所を見ながら古いグリースが出なくなるまで注入を続ける。
出てきた余分なグリースはヘラのようなもの(細いマイナスドライバーなどがあると便利)で取り除いたり,ウエスで綺麗に清掃しておく。
続いてシフトレバー部の充填。
こちらも充填してシフトレバーを動かし,さらに充填。
古いグリースが出なくなるまで,少し贅沢に給油する。
細いマイナスドライバーで狭い場所の余分なグリースを除去。
ちなみにこのマイナスドライバーは繊細作業用に私が加工したもので,先端の角をヤスリで削って少し丸くしてある。
こういったドライバーがあると各部に傷を付けにくい。
ニップル部の給油が終わったら次の場所だ。
船外機をチルトアップする。
ここらへんにグリースAを給油していく。
ここは船外機の推進力を受け止めながら左右に舵を切るときに摩擦する部分で,しかも海水にさらされるのでこまめに給油しておきたい。
まずは給油する場所をパーツクリーナーで綺麗にする。
拭き取ってみると,汚れた古いグリースがウエスに付着。
まあ,これ位なら普通だと思う。
ニップルに給油したばかりなので手元にグリースガンがあるから,ガンから出して塗る事にした。
グリースガンのノズルがホースのタイプだとこういった作業は若干やりにくいと思うので,その場合はガンからではなくグリースのチューブから使う。
こっちの方にも塗っておく。
グリースを指で伸ばしていく。
ちなみにこの場所は私が船外機をかったばかりの頃,あまり給油しなかったために塗装が剥がれ落ちてしまった。
その後は特に塗装などやっていないのだが,こまめに給油しているので腐食など不具合は発生していない。
続いては船外機をトランサムへ固定するボルトへの給油。
ガンからグリースを出す。
こんな感じでボルトにグリースが付いた。
反対側のボルトがしっかり締まっていて船外機が固定されている事を確認し,給油したボルトを緩めていくと塗ったグリースが本体側へ入っていく。
このネジ部が痛んでしまうと航行中に船外機の振動で固定が甘くなってしまい,最悪の場合航行中に船外機が外れてしまう事もあるらしい。
キツくなる直前まで緩めると,こんな感じでワッシャー部と本体との間にグリースがたまる。
この状態でワッシャーを回し,ボルトとワッシャーの間にグリースを入れる。
ワッシャーの内側からもボルトとの摩擦面にグリースを塗るといいと思う。
反対側にも給油して,またボルトを回してグリースを馴染ませていく。
このとき指でグリースを押さえながらボルトを回すと均等に塗られていくのだが,ボルトにバリなどがあると指を切るかもしれないので注意する。
ボルトを締めこんでいくと,こんな感じで汚れたグリースが押し出されてくる。
汚れがひどい場合は,清掃しながら給油を数回繰り返す。
最後にハンドルの内側。
付け根のあたりにグリースを塗る場所がある。
まずは付け根部分にあるプレートを外すため,プラスのボルトを2本外す。
小さいプレートが外れ,こんな感じになる。
このプレート内側はスロットル操作によって回転し,摩擦が発生するので給油する。
グリースAを指で給油してスロットルを回してなじませ,プレートを元に戻す。
最後にスロットルケーブルが取り付けられる部分。
ここの動きが悪くなるとワイヤーにほつれが発生したりして,スロットル操作時などでトラブルが発生し,ワイヤーが切れたりスロットルが戻らなくなったりする場合がある。
本当ならキャブ側のワイヤーを外してハンドル側のたるみを多くして,ワイヤーをはずして清掃・給油するんだろうけど,今回はこのまま可能な限り古いグリースを取り除いて,指で給油した。
やり方は人それぞれ,他にも給油箇所はあるでしょうけど,私の定期的なグリスアップはこんな感じてやっています。
日常的なグリスアップを行う事で航行時のトラブルが減るだけでなく,船外機の寿命は大きく変わってくるでしょう!