今回は,スパーク・プラグの整備だ。
この船外機は4サイクル・エンジンのため2サイクルほどシビアではないが,点火系の消耗品であるとともに,点検することでエンジンの調子を把握する事ができる。
ときどき脱着・点検しよう。
まずはトップカウルを外して,このような状態にする。
点火系の整備をするときは,電気が流れないようにしないと危険!
点火に使う電気は,バイクや車だと2万ボルト前後の高電圧が発生する。これを食らったら,かなりの激痛が走る。
ちなみに,私は食らった事が過去に数回ある。船外機じゃないけど。
また,プラグを外した穴(エンジン内部)から気化したガソリンが出てくる場合もあるので,引火したら危険。
まあスターターのロープを引いたりしなければ大丈夫だとは思うが,何が起こるか分からないので念のため。
はい,点火できないようになりました。これでスターターのロープを引いても,点火の火花は発生しません。
我が家のような小さい子供がいる家では,子供のいたずらも想定しておかなければ危険だ。
写真中央の赤い部品が,スパーク・プラグの頭に付いている「プラグ・キャップ」だ。
プラグ・キャップを外すとスパーク・プラグが見えてくる。
次に矢印の部分にあるゴム製の黒いフタを外す。「サービス・ホール」と呼ばれる,整備用の穴だ。
サービス・ホールとプラグ・キャップが外れた。
矢印の,白い部品がスパーク・プラグだ。
こんな感じで作業すると,外しやすい。
結構固くて突然緩んだりする事が多い。
突然緩んだときに工具が斜めになったりすると,プラグの「碍子」という部品にヒビが入る場合がある。気をつけよう。
ちなみに,少しでもヒビが入ったらリーク(漏電)の危険性があるため,プラグは再起不能だ。
今回使用しているソケットは,プラグが外れたときに落下しないように,内部にマグネットが入っている。
通常売られているプラグ用ソケットは,だいたいマグネット入りだ。
特に海上でプラグを脱着するような事になってしまった時は,このような工具を使って絶対にプラグを落下させないようにしたい。
船外機購入時に付いてくる工具は,本当の意味での非常用と考えた方が良いだろう。
はい,外れました。まず名称と基本構造を覚えよう。
プラグキャップからくる高電圧は,「端子」へと導かれる。
高電圧の通路は電気が漏れないように,「碍子(がいし)」で覆われている。
碍子は磁器でできているため,衝撃を与えると結構簡単に割れる。
プラグをエンジンに取り付けた時に,エンジン内の混合気が漏れないように「ガスケット」で密閉している。
プラグキャップから端子へきた高電圧は,内部の軸を通って「中心電極」へと到達する。
この間,高電圧が漏れないように「碍子」でずっと覆われている。
外側が金属の部分でも,内部は碍子で覆われている。
中心電極まで到達した高電圧は電気が流れる道がなくなっており,行き場を失っている。
すぐ近くに「接地電極」というものがあり,行き場を失っている高電圧は,ここに向かって雷のように放電する。放電後の電気は,
接地電極 → ネジ山 → エンジン本体
と流れていく。
※電子や放電の細かい話になると,ここでの説明には不適切な箇所があるかと思いますが,こういった考え方でも整備には支障ないかと思います。
中心電極と接地電極の間は,このプラグの場合は 0.6~0.7mm程度のすき間がある。
このすき間の事を「プラグ・ギャップ」「スパーク・ギャップ」などという。
すき間が無かったら単に電気が流れるだけの通路になってしまうが,僅かなすき間がある事で放電現象が発生し,エンジン内部の混合気に点火するのだ。
ちなみに放電は雷と同じような原理であるため,角が尖った場所に飛びやすいという特徴がある。
プラグには沢山の種類があり,碍子に書かれている型式で判断する。
バイクなんかだと改造した場合やエンジンの調子などによって型式の違うものに変える場合があるが,船外機の場合は「指定型式のみ」で間違いない気がする。っていうか,自己流で型式を変えるのは危険だと思う。
プラグの型式を変えないとエンジンの調子が保てないという事は,何かプラグ以外のトラブルを抱えている可能性が高い。
ちなみに私の船外機の型式は「BR6HS」だ。
同じ船外機でも年式によって違うプラグになっている可能性もあるので,自分で確認して頂きたい。