警告!!このページはマニュアル等を参照した整備の模範的要領ではなく,自分の行った自己流整備の記録です。船外機の整備ミスは命に関わるという事を忘れずに,できるだけプロに任せる事を強くお勧めします!このサイトを参考にした結果による,いかなる事態にも責任は負えません!

製作開始日:2011年6月4日

ヤマハ2馬力船外機(F2AMH)のシフトレバー

私が持っている2馬力船外機(ヤマハ:F2AMH)には「シフト・レバー」があって,「前進」と「ニュートラル」に切り替えることができる。

2馬力より大きな船外機のほとんどは,「前進」「ニュートラル」の他に「後退」があるらしい。

ホンダの2馬力船外機(BF2シリーズ)の場合はこのようなレバーは無く,アクセルを開閉すると勝手にクラッチがON・OFFする「遠心クラッチ方式」を採用している。

私の船外機は,「ドグ・クラッチ方式」と呼ばれるものだ。

ちなみに,写真はニュートラルの状態で・・・。

ヤマハ2馬力船外機(F2AMH)のシフトレバー位置の表示

写真のようにレバーを右に倒すと「前進」になって,プロペラが回転する。また,現在のシフト位置が分かるように,トップカウルに記号が書かれている。

「前進」の状態でエンジンを始動すると,いきなりプロペラが回転するので危険だ。

使わないときは,必ず「ニュートラル」にしておく。


ここでは,レバーを動かしたときにプロペラが「回転」→「停止」する仕組みについて考えてみる。

構造を理解する事で,「海上でプロペラが回転しなくなった!」なんてトラブルを未然に防止できるかもしれない。

ヤマハ2馬力船外機(F2AMH)のドライブシャフトが入っているイメージ

まずはエンジンの動力伝達経路からだ。

エンジンの動力をプロペラへ伝えるために,「ドライブシャフト」という非常に長い棒がある。

これによってエンジンの動力をプロペラ付近にあるギヤへ伝達する。

ロワーユニットとドライブシャフト

ロワーユニットだけにすると,こんな感じだ。

クラッチを断続するための「シフトロッド」は2分割になっていて途中で切り離されるため,この状態だと短い。シフトレバー側に長いロッドが残っている。

また,ドライブシャフトやシフトロッドは,排気ガスや冷却後の海水にさらされているので汚れやすい。

ロワーユニットを取り除いて内部構造が見えるようにした

写真の向きが左右反対になってしまったが,ロワーユニットの内部はこんな感じだ。

ドライブシャフトの下に付いている2つのギヤは正確な名称が分からなかったので,写真のようにネーミングした。

ドライブシャフトはエンジン(クランクシャフト)に直結されており,常にエンジンと同じ速度で回転する。

ドライブギヤもシャフトに連結されているので,エンジンと同じ速度だ。

ドリブンギヤはドライブギヤと常にかみ合っているが,ドライブギヤより大きいため,エンジンより遅い速度で回転している。

数えてみたら,ドライブシャフトのギヤ歯数は「13」,ドリブンギヤのギヤ歯数は「27」だったので,エンジン回転速度の約1/2で回転している。

ドライブシャフト,ドライブギヤ,ドリブンギヤは,クラッチの断続に関係なく,エンジン回転中は常に回転している。



※訂正
左写真の「ここらへんにインペラが付く」が間違えています。
インペラはドライブシャフトに付きます。
後日修正します。 ごめんなさい。

プロペラシャフト,ドリブンギヤ,ドグクラッチが組まれた状態

エンジン回転中はドリブンギヤが常に回っている。

そしてシフトレバーが「前進」の位置になっていると,プロペラシャフトとプロペラも,ドリブンギヤと同じ速度で回転する。

エンジン回転中にシフトレバーを「ニュートラル」の位置にすると,ドリブンギヤは回っているのに,プロペラシャフトとプロペラは停止する。

動力の断続を行ってるのは,左写真の「ドグ・クラッチ」という部品だ。

プロペラシャフトとドグクラッチ

プロペラシャフトからドリブンギヤを外すと,こんな感じだ。

プロペラシャフトとドリブンギヤは一体化した部品ではなくて別々の部品なので,もしドグクラッチが無かったら,ドリブンギヤは空転するだけでプロペラシャフトへ動力を伝える事ができない。

ドグクラッチを分解してみる

プロペラシャフトを分解して,どのようになっているのか見てみよう。

ピンはこのように簡単に外れる。

ちなみにこの部品は,向きがあるので組み付け時に注意が必要だ。

ドグクラッチ単体

ドグクラッチは,こんな感じ。

これも向きがあるので,組み付け注意だ。

ドグクラッチのリターンスプリング

そしてシャフトの中には固めのスプリングが入っている。

シフトロッドとドグクラッチの位置関係

シフトロッドは,シフトレバーを操作すると上下に動く。

「前進」だとロッドは上に,「ニュートラル」だとロッドは下に移動する。

ちなみに,左写真は「前進」にシフトしている状態をイメージして並べたものだ。

この状態だと,ドグクラッチがドリブンギヤの内側部分に噛み合っている。

シフトロッドが下がってドグクラッチのピンを押した状態

シフトレバーを「前進」から「ニュートラル」に変えると,シフトロッドが下がる。

シフトロッドには湾曲部があり,ロッドが下がると湾曲部でピンを押すようになっている。

ピンが右方向に押されると,ドグクラッチも一緒に右方向へ移動する。

こうなると,ドグクラッチとドリブンギヤは切り離される。

シフトロッドとドグクラッチの動きを図解

これはドライブシャフトとギヤを除いたイラストだ。

前進位置の状態からニュートラルにすると,まずシフトロッドが下へ移動する。

そしてシフトロッドの湾曲部でピンを図の右方向に移動させ,ドグクラッチはスプリングを縮めながら右方向へ移動する。

前進位置へ戻すと,ドグクラッチとピンはスプリングの伸びる力で図の左方向へと戻る。

ドリブンギヤ単体

今度はドリブンギヤを見てみよう。

ドリブンギヤにはドグクラッチが収まるための溝部があり,ギヤの回転によってドグクラッチを回転させるための突起部(接触部)がある。

ドリブンギヤにドグクラッチを合わせてみた

ドグクラッチは,こんな感じで収まる。この状態でギヤが回転すると,ドグクラッチはギヤの突起部によって回される。

クラッチが回転すると,プロペラシャフト&プロペラが回転するというわけだ。

ギヤとクラッチの接触部分は力が掛かるため,分解した時には磨耗・破損状態をチェックした方がいい。

特にシフトレバーを中途半端な位置で止めたり,ゆっくりシフトしたり,エンジン回転が高い状態でつないだりすると,クラッチを傷めやすい。

このような形式のクラッチの場合,エンジン回転が低い状態で素早くシフトするのが基本となる。

ドグクラッチのピンを押前は,ギヤとクラッチが連結している

この状態だと,ギヤが回転すると,ドグクラッチはギヤの突起部に押されるため,ギヤと同じ速度で回転する。

したがってプロペラシャフトとプロペラも同じ速度で回転する。

これが前進の状態だ。

ドグクラッチのピンを指で押すと,クラッチが離れる

上写真の状態からピンを手で押すと,ドグクラッチが持ち上がってギヤから離れる。

この状態だと,ギヤが回転してもドグクラッチはギヤの突起部に押されないため回転しない。

したがって,プロペラシャフトとプロペラは回転しなくなる。

これがニュートラルの状態だ。

ドグクラッチを点検するときのチェックポイント

これはドグクラッチだ。赤丸の部分がギヤと接触する部分で磨耗しやすい。

分解したときは点検しておこう。

ドリブンギヤを点検するときのチェックポイント

ドグクラッチからの動力を受けるドリブンギヤ側は,ここらへんがチェックポイントだ。

今回の構造についてはメンテナンスのときに自分なりに解析したものなので全て正しいとは限らないが,だいたい合っているのではないかと思う。

そんなに構造は複雑ではなかったが,ここらへんのトラブルが海上で発生すると航行不可能になる可能性が高いので,分解した時は良く点検し,トラブルを未然に防ぎましょう。

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